二〇〇二年のスロウ・ボート (文春文庫 (ふ25-1))(古川 日出男)
村上春樹好きなら目に止まるタイトルに引き寄せられて手に取ってみたところ、「中国行きのスロウ・ボート」をサンプリングしたリミックス小説だという。
なるほどなあ、サンプリングって表現はありかもなあ、と思って買ってみたが、内容はピンとこなかった。確かに村上春樹の使ったフレーズが各所にちりばめられてはいるが、それだけ、ってかんじ。手段は面白いのだけど、それだけでは難しいんだな。まあサンプリングはあくまでサンプリングなので、村上春樹性を期待する事自体が間違いなんだろうけど。
そうそう、手段と言えば「超バカの壁」がスゴい!だって「超」ですよ?
さらに帯には「その壁を越えるのはあなた」ですよ。まいったなあ...。
本人がどこまで狙ってるのかは不明だが、ここまで開き直られると
もはや好感が持てる。いや、買わんけどね。
戸田誠二はネットで作品公開してたころからずっと読んでいますが、
これはいまのところの最高傑作ではないかと思います。
前からSF要素が入った作品はいくつかありましたが、今回は全面投入。ただし、SF要素は舞台設定のためだけで、あくまでメインはヒューマンドラマ。いつもの、といえばいつものではありますが、今回はとくに藤子・F・不二雄のSF短編集を思わせる完成度。実際、扱っているテーマが全く同じ作品もあります。
基本的に短編の人なのですが、共通するテーマについて最後で見事にまとめており、長編も期待したいところ。ちょっとクサいですが、泣けます。